ドアノ―
(Nikon D80)
広尾まで用事で出かけたので、ついでにお隣の恵比寿にある都写美の「生誕100周年記念写真展 ロベール・ドアノー」展を観てきました。
ドアノーその人について実はほとんど何も知らないのですが、「人を撮る人」という認識は合っているのではないかと思います。数年前、日本橋の三越でも写真展を観たのですが、この人の写真は「プリントの技術が」、とか、「構図が」ということよりもなによりもまず写っている「人」が興味深くて観ているうちに楽しくなってきてしまう。そこが私には一番魅力を感じるところです。何気なく観ている写真も、初期の頃から結構すごい。撮り始めて何年でそんなの撮れたらいいなというようなものを撮っていて、いいなーと思ってしまう。
興味深かったのはレジスタンス運動の人たちを撮ったもの。ビラをまいていたり、印刷していたり。これは会場の解説によれば当時のレジスタンス運動の資料としては一級のものとのこと。
そんな風に、記録としての写真という意味でも面白かったです。
レ・アール市場の賑わい、パリ祭の残り香のような「パリ祭のラストワルツ」、「ゆれるワンダ」、「バヌーの昼食」「洗濯屋の家族、パリ」。
ほとんどがモノクロの展示写真の中に、1950年代の街の写真なのにカラーのものが何枚かありました。カラーになったとたん、過去のものだと思っている50年代と50年代に生きている街の人たちが急にリアルになってびっくりしました。カラーの力って、これなのでしょうか。急に当時の人たちが本当に生きて呼吸していたんだと言葉もなしに伝えてくる。写真の力を感じました。
ポートレイトも面白かったです。
公衆電話のガラス越しに撮った「ジャック・プレヴェール」。アイデアがいいです。
ジャックといえば「ぼくの伯父さん」のジャック・タチのポートレイトもありました。
ピカソは相変わらずギラギラしていて、ポートレイトにやたらと登場するジャコメッティ(いるだけでなにか雰囲気があります)がここでも登場。ジャコメッティってちょっと佐野元春に雰囲気が似ている?なんてぼんやりと思ったり。(今まで観たジャコメッティのポートレイトの中では、ブレッソンのものが一番好きです。雨の中、傘を差さずに、親しい人(ブレッソン)を見つけてこちらにピョンピョンピョンっとやってくる感じがすごくいい。この写真、欲しい。)
ユトリロの写真は初めて観ました。ボーヴォワールの写真は、人も興味ありましたが当時文化人が沢山集ったというカフェ・ドル・マゴの店内で撮られた写真だったのでそちらも興味深かったです。
被写体の面白さ、興味深さの方に目が行ってしまって忘れがちですが、冷静になって観るとプリントもよくて、特に気になったのは「マドモアゼル アニタ」。
白い肌に光がどこにも柔らかく当たっていて、座っている椅子は輪郭をきれいに強調されていて、黒い(モノクロなので)髪のあたりは背景も微妙に黒っぽいのですが髪はつぶれていない。写真の実物を買えるわけないので図録を買おうかなと思いました。図録で観るとちょっと別のものになってしまっていたのでやめたのですが、とてもいいなと思いました。
その他、雨の中のメリーゴーランドを撮ったものや大雪のエッフェル塔は何かとてもパリらしくて、いいなと思いましたし(雨の中のメリーゴーランドは後でポストカードを買おうか悩みました。)、パッチワークのようにパリの街の写真をつぎはぎしたのかな?というような「パリの建物のモンタージュ」も面白かった。小さいお店を撮ったものもかわいくて、パリに行きたくなりました。
楽しめて、勉強にもなる。こんな写真展はいいなと思いながら帰ってきました。
写真展は5月13日まで開催されています。
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コメント
近所の本屋でドアーノの写真があったので
パラパラと見ながらニンマリしてました。
写真展を見に行くのが楽しみです。
投稿: あき | 2012年4月26日 (木) 22時26分
いつも写真展は純粋に観たいというもののほかに
何か学び取りたい・・・!という目的が大きかったりするのですが
これは純粋に楽しかったです。
自分は人の写真が好きなのだと思います。
ドアノ―は演出させているものもあるようですが
それも敢えて楽しんでしまいました。
図録を買わなかったので写美でいただいた作品リストを
家で見ながら思いだして書いた記事なので
少し記憶違いもあるかも知れませんし、
よかったけれど思いだせなかったものもあります。
どうぞ実際に観てあきさんのお気に入りを見つけてください。
投稿: anise | 2012年4月27日 (金) 20時09分