しずけさへ ようこそ
(Nikon D80)
先々週のことになりますが、上野の国立西洋美術館で開催されている、
「ヴィルヘルム・ハンマースホイ 静かなる詩情」展に行ってきました。
ハンマースホイの絵に描かれているのは、大部分が妻イーダの後ろ姿やその住居であるデンマーク・コペンハーゲンの「ストランゲーゼ30番地」。
絵からは音のようなものが感じられません。
まるで、雪の降った日のような、しんとした世界です。
絵の中の空間ではイーダがこちらに背を向けて佇み、コペンハーゲンの日差しがただゆっくりと動いていきます。
独特な題材、色彩、光の揺らぎ、そしてしずけさに、ああこれは好きだと観るなり思い、どんどん進んでいくにつれてますます確信していきました。
この一連の絵にちょっと不気味な感じがする方もいらっしゃるかもしれません。
孤独を感じると思われる方もいらっしゃるかもしれません。
でも わたしにはむしろ心地よさが感じられました。
人の目や干渉や日常からも解放されて静かな場所に一人でいるとき、なんともいえない心地よさを感じる時があります。もしかしたら、その心地よさが、ハンマースホイの絵の中に感じる心地よさなのかもしれないと思いました。
それは本当の孤独ではなく、外の世界との繋がりをもっているからこその、しずけさへの愛着なのかもしれません。
ハンマースホイは日常の生活や妻との間でひんやりした孤独を感じていたりしたのではなく、妻とのこのしずかな生活を愛し、心地よく感じていたのではないか、もしかしたらこの絵はハンマースホイにとってのしあわせな時間の表現なのではないか・・・などと思ったりしました。
初めて観たヴィルヘルム・ハンマースホイの絵、
その出会いを感謝したくなるような、魅力的な絵たちでした。
* * *
おまけ
このハンマースホイ展を教えてくださったグールドの帽子さんが、
ご自身のブログの中で「もしもハンマースホイが一枚絵をくれると言ってくれたら何をいただくか」ということを書かれていらっしゃり、楽しい「もしも」を自分でも考えてみました。
「お嬢さん、特別に、この中で一枚あなたが気に入った絵を差し上げましょう。」
その言葉は飛び上るほど嬉しいけれど、一枚に絞るのは悩みます。
妹さんを描いた絵も、チケットの絵もいい、光の差し込む誰もいない室内もいい・・・・・
さんざん考えて、いつも眺めて癒されそうな、「陽光習作」(1906年)をお願いすることにしました。
やわらかい空気が印象的です。
どの絵もいいので、苦しい選択でした・・・。
(絵がいただけるというのは想像なのですけれどもね・・・(笑))
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コメント
ふむふむ、aniseさんはそう感じたのですね。
早く観たいな。
昨日NHK教育「日曜美術館」で、ハンマースホイ展を採り上げていました。
ご覧になりました?
投稿: marikichi10 | 2008年11月17日 (月) 22時20分
無理に選んでいただき、心苦しいお願い、
ありがとうございました。
「陽光習作」、ドアに蝶つがいもノブもなくて窓からの光が柔らかく、静かです。こんな室内で長いすに座り本を読みたくなります。
aniseさんが「ハンマースホイにとってのしあわせな時間の表現なのではないか・・・」と書かれていましたがとても素敵な感想だと
思いました。
リンゴのおいしい季節になりました。
リンゴを齧りながらハンマースホイのページをめくる!
ハンマースホイのカタログ重かったですよね。
私は指が痛かった。
(ので他の荷物と一緒に宅急便でイナカーナへ送りました)
投稿: グールドの帽子 | 2008年11月18日 (火) 10時18分
marikichi10さん、こんばんは!
ハンマースホイ、とってもよかったです。
marikichi10さんの観に行かれる今月末も、もうすぐですね。
楽しみですね~!
日曜美術館、観ましたよ!
日曜美術館、好きでよく観るのですが、この間はTVをつけたら
とり上げられていたので、あ!と思いました。
ただ、ちょっと眠かったのであまり集中して観れませんでした(涙)
また再放送してくれたらぜったいもう一度観ようと思います。
投稿: anise | 2008年11月18日 (火) 20時06分
グールドの帽子さん、こんばんは!
絵を一枚選ぶのはとっても楽しかったです!
無理に選んだわけじゃないですから、どうか気になさらないでください。
グールドの帽子さんのおかげで、一つの美術展で何度も楽しい
思いができました♪ありがとうございます。
ハンマースホイのカタログ、重かったですね
でもとても立派でびっくりしました。
美味しいリンゴを齧りながら、暖かい部屋でゆっくり眺めたらしあわせですね・・・!
投稿: anise | 2008年11月18日 (火) 20時20分