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2006年2月 7日 (火)

山口 瞳 

毎年、成人の日(1月15日)と入社式の日(4月1日)になると、サントリーが新聞広告に新成人と新社会人のためのエールのエッセイを載せていて、そのエッセーを1978年~92年まで書いていたのが故・山口 瞳さんでした。

私はこれが大好きで、
毎年、必ず読んで、うう~むと唸り、笑い、シャキーンと姿勢を正していました。

亡くなってしまったので叶いませんが、もしご存命なら、ぜひとも一度お酒の席にご一緒させていただきたかったです。
別に、自分は発言なんてしなくても、ただ美味しいお酒を飲みながらいろんなお話を聞いていたい、そんなすてきな人生の先輩です。

お酒の夢は叶いませんが、ありがたいもので、本はいつでも本屋で私達のことを待っていてくれます。
講談社文庫に、当時の新聞広告を含む山口 瞳さんのエッセーが出版されています。
せっかくなのでその中から新成人向けと新社会人向けのものを一つずつ。

    「青年よ、思いきって行け」

この世で好ましいものの一つが「礼儀正しい青年」だ。
反対に、猪口才(ちょこざい)な奴、青二才、嘴(くちばし)の黄色い奴、甘ったれは大嫌いだ。
「若者だから、このくらいは許されていい」なんて思っていたら大間違いだ。・・・こう書いてきて、僕なんか、顧みて忸怩(じくじ)たるものがある。
成人式を迎えた諸君!
今日から酒が飲める。
そこで、僕は、諸君に、「酒の上の失敗を怖れるな」と言いたい。
思い切って行け!ガンガン行け!
先輩は馬鹿じゃない。諸君の若さを理解してくれるはずである。
ただし、それは、その根底に、礼儀正しさと謙虚さがある限りにおいては、という話になる。

                                       (1984年1月15日)

    「新入社員諸君!」

僕には、もうクリスタル族なんという青年の心持がわからなくなっている。
何も言うことはない。
そこで、若い時の山本周五郎先生を絶望から救ってくれたストリンドベリイの言葉を掲げ
ることにする。
「苦しみつつ、なおはたらけ、安住を求めるな、この世は巡礼である。」
働くのは会社のためでも家族のためでもない、自分のためである。
失意のときは、この言葉を思いだしてくれ給え。
気楽な家業だと思ったら大間違いだ。
常に安住するな。
しかし、この言葉の本当の意味がわかるのは、四十歳、五十歳になってからだろう。
新入社員諸君!
この人生、大変なんだ。
そうして、本当の酒の味がわかるのは、苦しみつつ、なお働いた人たちだけなんだ。

                                        (1981年4月1日)

新成人や新入社員じゃなくっても、背中がシャキーンとなって、頑張ろうっていう気持ちになってしまいます。
いつか本当のお酒の味がわかるようになれるよう、
明日も頑張って働きましょう!

          *         *     *

新聞広告のエッセーが読めます。
その他、いろいろ。

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食のエッセーも良い!

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